「ぐりとぐら」秘話

今日付の日本経済新聞朝刊・文化面に、絵本作家・中川李枝子さんの記事が出ていた。
中川(旧姓大村)先生は元々、東京の無認可保育園の保母(今で言う保育士)として働きながら、童話の同人誌に寄稿してきた。
その中から、保育園での子供たちのワガママっぷりをモデルにした名作「いやいやえん」が誕生。
うさこちゃん(=ミッフィーちゃん)」シリーズの翻訳でも知られる石井桃子先生の勧めで単行本化された。
実妹山脇百合子さんが絵を担当する「ぐりとぐら」は、親子2代で読み継がれるシリーズとして、現在絵本だけでなく
ことばあそびカードなどの関連商品も豊富に出ている。大村姉妹先生は、「ぐり」と「ぐら」みたいな仲良しなのだ。
・釣るなら食い物で
保育園の向かいには駒沢グラウンド(現・駒沢オリンピック公園)があり、そこで遊びたがる子供たちを
教室にとどまらせるため、面白い話を考えるのに先生は心を砕いたという。
ぐりとぐら」に登場する“みんなの憧れの食べ物”である「大きな卵のカステラ」―
これは「ちびくろサンボ」に登場する「バターたっぷりのホットケーキ」の向こうを張って作られたという。
そうだったのか(笑)。そりゃー甲乙つけがたいわ(2006年4月5日の日記参照)。
その後。保育園は閉園になり、中川先生は童話作家に転身。
・すみれちゃんのこと
そして。「ぐりとぐらとすみれちゃん」という作品についてのエピソードも。
中川先生は、ある講演会で男性からファンレターを手渡された。手紙を書いたのは、その男性の奥様である。
夫妻の娘・福士すみれちゃんは「ぐりとぐら」の本が大好きだったが、病気のため4歳という幼さでこの世を去った。
物が食べられない闘病生活のさなか「ぐりとぐら」シリーズの中に出てくる食べ物の絵を眺め、つまんで食べる真似を
しながら過ごしていたという。
そこで姉妹先生は、すみれちゃんがぐり・ぐら兄弟と遊ぶお話として「ぐりとぐらとすみれちゃん」を書いた。
・みんな釘付け
姉妹先生の作品には「次に何が起きるんだろう?」という、わくわく感がある。冒険心を満たしてくれる。
生まれる子供の流れは絶えずして、しかも元の人にあらず。これからもあのカステラは、子供たちを魅了し続けることだろう。
ちなみに。同じく姉妹先生の作品である「そらいろのたね」の中で、空色の種からできた“空色の家”に、ぐりとぐら
入り込んでる場面があったりする(笑)。