生きることがリハビリだ―「ライフリー」の魂

ルビコンの決断」(テレビ東京系)。今週のお題は「商品に魂を込めろ!ユニ・チャーム快進撃の秘密」。
同社が大人用おむつで史上初めて「パンツタイプ」を開発、徹底したマーケティングで利用者に認知されるまでを
再現ドラマで描く。
・自らが率先して
ユニ・チャームといえば。創業者で現在は会長の高原慶一朗さんが、今月の日本経済新聞私の履歴書」で
自らの半生を綴っている。
3月1日付の初回は、2006年に高原会長が脳出血で倒れるという衝撃のシーンから始まっていた。
「寝たきりゼロ」を目指している会社の会長が寝たきりになるわけにいかない!と必死のリハビリを続け、
今では日常生活に支障はないとのこと。
また、以前「カンブリア宮殿」(同局系)に高原豪久社長(慶一朗会長のご子息)がご出演された際にも語られていた
同社の「SAPS会議(Schedule=計画する、Action=行動する、Performance=効果のほどを見る、Schedule=
反省し次の計画を練る)」や「三現主義(現場・現物・現在)」の話も出てきた。
高齢化社会を見据えて
今では介護用品の定番となった「大人用パンツタイプおむつ」―バブル崩壊後のユニ・チャームの業績不振を救った
乳児用のパンツタイプおむつ「ムーニーマン」の技術を応用し、大人用おむつ「ライフリー」シリーズの新作として
1990年代前半に開発された。ちなみに開発当時のコードネームは「アポロ」だったらしい。
・誰のためのおむつなのか
だがそれも、介護施設などの現場では
「(転倒の危険があるので)寝たきりの患者本人に『自分で穿(は)かせる』のは無理」
「患者には寝ていてもらって、同じ時間に一斉に交換する方が楽だから」
・・・と、嫌がられた。
介助があれば自力でトイレまで行ける人も、半ば強制的に寝かされっぱなし。本人たちもそれを諦めている状態。
パンツタイプが介護の現場に受け入れられるかどうかは難しい状況だった。
アポロ計画、挫折!?
ユニ・チャームマーケティング担当者は病院を回り、パンツタイプおむつについて説明を続けた。
が、ここも介護施設と同じ。色よい返事はもらえなかった。
いい製品を作っても。自信を持って生み出しても。買ってもらえる可能性が無ければ、発売は見送られてしまう。
アポロはお蔵入りの危機にひんしていた。
・需要は必ずある
そんな中。「歩ける人は、なるべく歩かせる」というリハビリを推奨する病院が静岡県の伊豆にあることがわかった。
その病院に試作品を持って行くと・・・医師がパンツタイプの可能性を認めてくれたのである。
そしてついた名前が「リハビリ用パンツ」。1995年、発売に漕ぎつけた。
ほどなく「『寝たきり』は『寝かせきり』から」というキャッチコピーが生まれ「寝たきりゼロを目指す介護」を
同社は標榜することになる。
患者本人のみならず。介護する側も「おむつ離れ」しなきゃイカンのですね。
・家で元気に過ごせる幸せ
そして。マーケティング担当者は「患者が退院した後の、家庭での介護」に商品を浸透させるべく、新たな作戦に出る。
ドラッグストアで「お勧(すす)め品」扱いにしてもらい、店員さんから消費者に積極的に勧めてもらうのだ。
売店相手のプレゼンには、「老老介護」の現状を取材したテレビドキュメンタリーの映像を使用。
これにより「リハビリ用パンツ」は爆発的にヒット。他社もパンツタイプを続々と発売した。
コロンブスの卵”さながら、介護の現場の「寝かせきり」の常識を覆す道をユニ・チャームが作ったというわけだ。
・21世紀の排泄ケア
今ではドラッグストアなどで大人用紙おむつを見ると「寝て過ごす方」から「自力で歩ける方」までの5段階+
「軽い尿もれ用」の実質6段階に分かれているようで。細かいニーズに対応できるのだ。
そして今現在の「リハビリパンツ」は、トイレの便器などに座ったまま、サイドテープをはがしておむつだけを外せる
「ズボンを脱がずに交換リハビリパンツ」へと進化している。
また、夜間のおむつ交換の代わりに、尿だけを随時吸引する機械「ヒューマニー」というのも開発された。
生きていれば、誰もが年をとります。高齢化社会を「やさしさでささえる」ユニ・チャームの挑戦は続く。
・・・なるべく健康で居て、大人用おむつの世話にならないようにしたいけど。
・犬猫も認知症になるらしい
ちなみに。ユニ・チャームグループのユニ・チャームペットケア社では、犬や猫に穿かせる紙おむつも作っている―
従来、雌犬の生理用だったのが・・・最近はペットも高齢化社会で、排泄のために必要なのだそうで。
15歳未満の人間の子供の人口より、犬猫の飼育頭数の方が多い昨今の日本。こちらも大きなマーケットである。