われても末に、逢わんとぞ思ふ

NHK連続テレビ小説ちりとてちん」最終週。「ようこそのお運びで、厚く御礼申し上げます」の口上も、今週限り。
28日(金曜日)朝の放送後、8時30分のニュースの冒頭で森本健成アナウンサーが一言「明日の最終回もお楽しみに」。
ナイスアドリブ!暫しスタジオがどよめいた後「では、ニュースをお伝えします」と、いつも通りニュースに入った。
・場所は決まった
ドラマの時間は2006年9月。あの「徒然亭屋敷・お別れ落語会」から、実に4年が経とうとしていました。
大盛況だった落語会をきっかけに「徒然亭屋敷を改装して、そのまま常打ち小屋にする」ことを決めた徒然亭一門
(注:最初からそうすれば良かったのに・・・というツッコミも、
他のブログなどで多く見受けられましたが。
天狗座などのように、もっと集客力のありそうな土地に作りたいという構想があったのだろう、と勝手に解釈)。
新築の必要は無いものの、最初に集まった資金ではとても足りない。実に4年かかって改装が完了したというわけだ。
・よくわかりました
リアルでは2006年9月に「天満天神繁昌亭」という常打ち小屋が開席、盛況で「日経ヒット商品番付」の話題賞も受賞。
それをこのブログでネタにした当時、どれだけスゴいことなのかもわかっていなかった(すいません)。
開席の経緯はドラマとは違うけれど、上方落語界の念願だったのである。
・笑いも箸も、毎日欠かせない
「菊江仏壇店」や居酒屋「寝床」、中華料理「延陽伯」、ホームセンター「おとくやん」などスポンサーがついた中・・・
最大の大口スポンサーは、若狭塗箸製作所!既に社長になっていたA子@清海ちゃん(佐藤めぐみ)が、営業に訪れる。
入り口の上には、大きな塗箸のオブジェが「入」の字に重ねられてついている。
A子ちゃんとB子@喜代美ちゃん(貫地谷しほり)はこの何年か後から徐々に打ち解け、落語に登場する喜六と清八さながらの
仲良しコンビになっていた(呪いの石を打ち砕いた効果か?=笑)。
・「喜ぃ公」「清やん」本当の宿命
しかし。B子@若狭ちゃんの中では、ある疑問が持ち上がっていた。大阪に出てきて13年、自分は本当に「師匠の落語を
受け継ぐ仕事」ができているのだろうか・・・と。
その頃。小浜市では彼女らの父親・正典さん(松重豊)と秀臣さん(川平慈英)が、思い出話をしていた。
二人とも若かりし頃に入れ込んでいた三丁町の舞妓・きよみさんの名を、娘につけたのである(笑)。
小梅ばあちゃん(江波杏子)あたりは、とっくに気づいていただろうけど。
・決め手が無い
が。常打ち小屋開席を目前にして、大きな問題が発生していた。肝心の「常打ち小屋の名前が決まらない」ということだ。
草原兄さん(桂吉弥)が考えたのは「ゲラゲラ亭」。70年代センスである。小草若兄さん(茂山宗彦)は「底抜け演芸場」
・・・って底が抜けたら縁起悪いやん(笑)。土地家屋の主とは言え
「小草若の小草若による小草若のための小屋」じゃないし。
四草兄さん(加藤虎ノ介)は中国語で「ファーインダージャー(ようこそのお運びで、の意)」・・・なんで中国語やねん。
そして草々兄さんが考えたのは「草若の家」。そのまますぎるー!
兄弟子4人が喧々囂々、なかなか意見がまとまらない。
・誰が鼻毛やねん!お前や!
毎日落語をやっている場所。噺家が初心を忘れず稽古を続け、落語の伝統を受け継いでいく場所。
若狭塗箸のように、稽古したものを塗り重ねて、研いで磨いて美しい模様を出す場所。
そういう場所にしたいという願いをこめて「ひぐらし亭、というのはどうですか」と若狭ちゃんが思いついた。
が。蜩の紋は徒然亭の紋。他の一門の皆さんが了承するだろうか・・・という問題がある。
でも「大丈夫やろ」と尊権兄さん(波岡一喜)。日暮し、つまり「一日中毎日」落語をやることで「未来につながっていく」から。
尊権兄さんと柳眉兄さん(桂よね吉)と草々兄さん“上方落語三国志”がそう言えば、上の師匠方も納得するというもので。
個性も流儀も違う3人が、決意を新たにするのだった。
・せめて違う字に
小屋の名前も番組(噺家たちの出番)も決まり、今度は「寝床」の熊兄(木村祐一)が、初日に配る祝い膳弁当を完成させた。
試作品を味見して欲しい、ということで若狭ちゃんが一口食べる・・・と、いきなり吐き気を催した!
食中毒か?と思いきや、病院に行ったら「妊娠3ヶ月」の診断!
朝ドラでは久しぶりの「古典的な妊娠フラグ」!
子供を授かった喜びを、草々兄さんは草若師匠(渡瀬恒彦)と志保夫人(藤吉久美子)の遺影に報告。
名前は「落語の『落ちる』という字をとって男の子やったら『落太郎』、女の子やったら『落子(おちこ)』!」
これもまた底抜けにひどいセンスやな!それは止めてやれ(泣)。
・意味が大きく違う
妊娠の知らせを聞き、糸子お母ちゃん(和久井映見)も小浜から駆けつけた!つわりに苦しむ娘・喜代美ちゃんの世話に
お母ちゃんは大張り切り。
お母ちゃんの“茶色い料理”と、草々兄さんの落語の声。その中で、いつの間にか幸せな気持ちで笑っている喜代美ちゃん。
小浜を飛び出して、徒然亭屋敷に転がり込んだ頃のことを懐かしく思い出しながら、眠りにつくのであった。
・女の限界
若狭ちゃんの妄想の中で、娘・落子(仮名)(桑島真里乃)が登場。大阪朝ドラ恒例の「子役の転生」である。
この落子ちゃん、何故か小次郎おじちゃん(京本政樹)みたいな服装をして、言うことを聞かない娘である(笑)。
果ては「お前がちゃんとせえへんからや!母親の姿見て、娘は成長すんねん!」草々兄さんから叱責される!
・・・というネガティブな妄想が、吐き気とともにやって来る始末(笑)。
糸子お母ちゃんは草々兄さんに、若狭ちゃんをしばらく休ませて欲しいと願い出る。草々兄さんも母子の身を案じ、賛同する。
結局若狭ちゃんは、泣く泣く初日の挨拶と高座を断念。
高校時代の文化祭のトラウマが炸裂する!またしても「脇役のB子」になったと嘆く。
しかし。そこで頼りになるのは順ちゃん(宮嶋麻衣)だ。「きっと何か、新しいもんが見えてくる筈やで」と断言!
これが彼女の「史上最大の大予言」だったのである。
・草原兄さんの後継者
ひぐらし亭」開席の日。休むように言われて手伝いもさせてもらえず、退屈する若狭ちゃんの所にオーバーオール姿の
青年がやって来た―どっかの落研か?
「若狭ちゃん!」呼びかけられた若狭ちゃんだが、彼の顔に見覚えは無い。
「もしかして・・・わかってへん?僕や、僕!」誰やねん?「瀬をはやみ!岩にせかるる滝川の〜・・・」
落語「崇徳院」の和歌を復唱する姿。彼は草原兄さんの息子・颯太くん(中村大輝)だった!
若狭ちゃんが大阪に出て来た頃「せをーはやみ!」と、父親の落語を真似ていたチビ颯太(河合紫雲)。ずっと会わない間に
すっかり大きくなって、もう20歳だ。過去の回想シーンで、内弟子時代の草原兄さんがオーバーオールを着ていた姿と重なる。
今回、照明係のバイトとしてひぐらし亭に来た颯太くん。父・草原兄さんの落語講座の手伝いもしている。
「今、大学で日本ぶんぎゃ・・・文学を専攻」噛み癖も父親譲り(笑)。口伝文化である落語のデータをまとめ、残したいという。
落語家になる決心はしていないが、手伝いという形で落語に関わっている。
・含蓄のあるお言葉
若狭ちゃんは居酒屋「寝床」で、祝い膳弁当の包装を手伝う。添えるお箸は若狭塗箸製作所からの提供だ。
色とりどりの食材を盛ったお弁当を見て、「子供の頃のお弁当は残り物が中心なんで、茶色かった」と思い出を語る若狭ちゃん。
作る側の熊兄曰く、今日一日だけの弁当なら「そらなんぼでも、きれいな凝ったものもできるわ」。けど毎日のこととなると
「『早よう』『確実に』『子供の体のこと考えて』作らなあかんねんから」。確かに。
「毎日続ける、いうのはそれだけでスゴい事やで」。お母ちゃんのお弁当って、ありがたいですね。
さて、出来上がった弁当を師匠方に配りに行く・・・と、ここでも糸子お母ちゃんの話が大ウケ(笑)。
師匠方がお弁当を開くと・・・尊徳師匠(芝本正)のお弁当に箸が入っていない!「拷問やでー!」と師匠。「こんな美味しいもん
目の前にして、食べられへんねやー」。
お母ちゃん曰く「なくなって初めてわかるお箸のありがたみ、ですやな」。
お箸は食卓の名脇役。どんなご馳走があっても、お箸が無いことには食べられない。お母ちゃんええこと言わはる。
「含蓄はええから、早よ食べさしてえな〜」尊徳師匠に早くお箸をー!
・トラウマの代わりに
颯太君にすすめられ、若狭ちゃんはオープニング挨拶の照明操作を担当することに。
兄弟子4人と小草々くん(辻本祐樹)の5人の挨拶を、照明ブースから見守った。
晴れの舞台に輝く、一門の噺家の顔。割れんばかりの拍手に包まれるひぐらし亭
観客の中には、天狗芸能の鞍馬会長(竜雷太)も居た。東京から磯七さん(松尾貴史)も駆けつけた。
「人にライトを当てるいうのは、素敵な仕事やな」順ちゃんの言葉が思い出され、若狭ちゃんの中に「自分でも掴みきれない思い」が
こみ上げてくるのだった・・・。
・完全燃焼
10月11日。正太郎爺ちゃん(米倉斉加年)の命日に当たる日、若狭ちゃんが「草々・若狭夫婦会」の高座に上がった。
若狭ちゃんの演目は「愛宕山」。そう、いつもお爺ちゃんと一緒に聴いていた、草若師匠の十八番に挑戦するのだ。
落語のテープを聴いていた頃、お母ちゃんがかわらけ投げをした(そして落語さながらに、財布まで投げた)記憶が蘇る。
渾身の「愛宕山」は観客の心を掴み、満場の拍手が沸き起こる。そこで一言
「私の最後の高座におつきあいいただきまして、ありがとうございました」徒然亭若狭、突然の引退宣言!
何も知らされていなかった兄弟子や和田家の家族、お客さんたちに動揺が走る!どういうことや!
「見つけてしもたんですもん。『自分のなりたいもの』」。
・後悔は出てこない
出産後も落語家修行を続けるよう勧める糸子さんに、若狭ちゃんは「ゴメンな」と一言。でも引退することについてじゃなく
「小浜出るとき、ひどいこと言うてゴメンな」。
家族のために自分を犠牲にする“脇役人生”を拒否し「お母ちゃんみたいになりたくないの!研いでも研いでも後悔ばっかりの
お箸になりたくない!」と言っていたことだった。
今は「お母ちゃんみたいになりたいんや」。
太陽みたいに家族を毎日照らす、お母ちゃんの存在。その人生が、どれだけ豊かなものであるかがわかった今、若狭ちゃんは
おかみさんとして後方支援に回ることで、落語の伝統を支えていく決意を固めたのだった。
駄メイド実家の鬼母さーん。親不孝者の娘でごめんよー(泣)。
・そこは全力でツッコミ!
2007年、春。喜代美ちゃんは臨月を迎え、出産のため小浜に里帰り。陣痛が死ぬほど痛いと聞いて、今更ながら怖気づき
「どねしよ・・・」と弱気になる。
順ちゃんはそんな喜代美ちゃんに「覚悟もせんとお母ちゃんになるて言ったんか!しっかりしい!」と叱咤する。
覚悟!?あんたが言うなや順ちゃん。うっかりアホボンとの間に子供作って、魚屋食堂と箸工場の跡取り問題を
勃発させたあんたこそ、覚悟なく母親になろうとした身やんか(笑)!今回は納得いかんぞ。
でもまあ、そんな順ちゃんに今回も励まされた喜代美ちゃんではありました。彼女が居なかったら“B子”の人生は
どうなっていたか・・・。
・今週の妄想
ナレーションで「お母ちゃんになって20年近く経つ今も」という台詞があった。だとすると。ナレーターの上沼恵美子さんは
「およそ50歳過ぎた頃の喜代美ちゃん」という設定なのだろうか。
しかし・・・20年後の落語界って、どうなってるんでしょうね。映像技術の進化により、鬼籍に入られた師匠方の落語が
バーチャル立体映像でいつでも見られる!なんていうことも、あるんでしょうか。
・皆さんのその後
パパになる草々兄さんはその後も、落語一筋。小草若兄さんは「四代目徒然亭草若」を襲名、鞍馬会長も一安心。
そしてA子ちゃんと“いい感じ”になるのだが・・・なかなか結婚には至らず。
草原兄さんは落語教室の功績が認められ、大阪府から表彰された。下積み時代から支えた妻・緑ねえさん(押元奈緒子)、
颯太くんとともに喜びを分かち合う。
四草兄さんには、衝撃的な出来事が。見知らぬ女性から「あなたの子です!」と小さな男の子(大八木凱斗)を
押し付けられ、そのまま引き取って育て上げたのだ・・・「迷い込んできたものはしょうがない」と。
小浜では正平くん(橋本淳)が博物館の学芸員に。その後留学し、博士号の資格もとった。
魚屋食堂の双子―春平くん(新岡澪)は箸作りに、順平くん(新岡塁)は焼き鯖に興味を持ち、、それぞれ大人になってから
箸工場と食堂の跡取りに。お松さん(松永玲子)は「双子タレントとして売り出したかった」らしいが、それだと京都あたりの
タレント養成所にでも通わせなきゃならんか。
・どっちだったんだ
そして喜代美ちゃんは産気づき、病院に担ぎ込まれた。分娩室の前で、草々兄さんが「愛宕山」を語り続ける―
正典お父ちゃんが、糸子さんの出産の折「ふるさと」を熱唱したように。
子供は無事生まれた(男か女かは明かされていない・・・やっぱり妄想に出て来た女の子が生まれたのだろうか)。
・・・と、まあ。彼らの行く末を見守りたいけど、お時間となりました。「ちりとてちん」これにて終幕。
・イケメンは不可欠
この半年、笑わせていただきました。底抜けに面白かったー!
しり上がりに人気が上昇した理由は、やはり「見続けたいイケメン」の効用であろう。
草若師匠以下、徒然亭の落語家さんたちの中の人。落語、狂言、映画、テレビドラマと、いろんな方面の才能が集まった。
そしてヒロインの弟・正平役のマジレッド橋本淳くん。「ヒロインが親と喧嘩したとき、間を取り持つしっかり者の弟」は
近年の朝ドラに欠かせない存在(笑)。
橋本くんと同じ“特撮枠”の友井雄亮くん(仮面ライダーギルス)、波岡一喜さん(ジャスティライザーのデモンナイト)
といった役者も忘れてはいけない。
崇徳院」ではないけれど、「われても末にあわんとぞ思う」。「ちりとて」メンバーに、また何らかの形で会いたいです。
・今週のこだわり
この日記で「ちりとてちん」について書くとき、気をつけなければならないことがある。それは
「蜩(ヒグラシ)」を平仮名で表記してはいけない、ということ。
−「何で?」
平仮名で表記すると、某サウンドノベルゲームのタイトルの略称と同じになってしまうからです。そして「その某ゲーム」について
検索した人がいっぱい釣れてしまうからです。
でも「ひぐらし亭」はひらがなだった・・・釣られちゃった皆さん、どうもすいません。