「世の中の役に立つ」ために

テレビ東京系「ルビコンの決断」。今週は「アルコール0.00%への挑戦―キリンフリー開発物語」。
我々がさんざんお世話になっている「キリンフリー」を生み出したキリンビールの開発担当者・マーケティング担当者の
知られざる戦いを描く。
・伝説のモルトスカッシュ
かつてキリンでは「モルトスカッシュ」という“ノンアルコールビール”が発売されていた
(このブログで「キリンフリー」の比較対象の「仕方なくビール代わりに飲んでたアレ」としてよく登場する)。
同業他社も「ポイントワン」(アサヒビール、アルコール0.1%)など、似たようなものを作っていた。
「ホッピー」(ホッピービバレッジ、アルコール0.8%)も一応は「炭酸飲料」に属する。
酒税法上、アルコール1.0%未満の飲料は酒類とみなされない(天然果汁100%ジュースにも、天然由来のアルコールが
微量に含まれる事があるらしい)。
つまりモルトスカッシュは「お酒ではない」ということになっていたので「ノンアルコール」を名乗っていた。
・その前に満腹になる
しかし。大量に飲んだら、それなり酔っ払う事は明らかである(350ml入りを10本飲んだら、アルコール分5%の
ビール1本分と同じだけのアルコールを摂取することになりますわな)。
キリンビールさんにも「モルトスカッシュを飲んだ後に車を運転しても大丈夫なのか?」というお問い合わせが
多数来ていたらしい。
我が家ではモルトスカッシュを飲んだ後は、用心のため車の運転しなかったけどさ。
・飲む人も車も愛したいから
そのキリンビールマーケティング部に、某外資系企業から移籍してきた若い女性社員・梶原奈美子さん。
「どんなビールを作りたい?」と上司に訊かれ「社会の役に立つビールを作りたい」という志を語った。
世間では飲酒運転による悲惨な事故が相次ぎ、飲酒運転を犯したドライバーに対する罰則もどんどん厳しくなっていた。
そこでキリンは、酒類メーカーとして「飲酒運転につながらない、完全ノンアルコールのビール」の開発に乗り出す。
・肝心な部分なんだけど
−「完全ノンアルコールがいい、というなら。ウーロン茶で用が済むじゃない?」
そういう問題ではありません。あくまでも「ビールの風味を再現しながらもアルコール分無し」じゃなきゃダメなのです。
しかし。その開発は困難を極めた(「プロジェクトX」の田口トモロヲさん風ナレーションで)。
ビールの風味を構成する「コク」「香り」「キレ」「のどごし」は、麦芽やホップを発酵させることによって生まれる。
しかし!発酵すると、必ずアルコールが生成されるわけで。
相反する二つの要素をクリアするためには、どうすればいいのか。
・「許せる味」ができた
そこで研究開発チームは「酵母を使わない製法」にすることを決断した。酵母が無ければ、アルコールも出ない。
じゃあ。ビールの風味は犠牲にされてしまうのか?
風味の調整は、やはり同社のヒット商品である第3のビール「のどごし生」を作った研究員が担当。
香料・酸味料・苦味料の力でビールの風味に最大限近づけ、なおかつ変な後味も残らないスッキリ感を実現できた
(現在、製法特許を4件出願中だそうで)。
こうして世界初の「アルコール0.00%」のビールテイスト飲料が出来上がった。また、キリンビール
警察庁科学警察研究所の論文を参考に、運転シミュレーターでの実験を行い」(オフィシャルサイトより)、
キリンフリーを飲んでも運転に差し支えないということを確認するという“念押し”までしている。
・マズかったらこんなに売れない
こうして2009年4月、キリンフリーは世に送り出された。
その反響は大きく、発売1ヶ月で「年間販売目標(63万ケース)の半分を超える(34万ケース)」激売れ。
5月には品薄になって店頭から消え、飲食店向けの334ml瓶用のガラス瓶が不足して追加発注するという事態に。
購買層は「車を運転する人」以外にも「病気で酒を止められている人」「飲めないけれど酒席につきあわされる人」
「妊娠中や授乳中のママさん」などなど、当初のメーカーの予想を超えていた。
救われた人は多い―みんなが感謝してますよ。
・冷蔵庫に常備
そして世間に認知されたキリンフリーは「ビールの代用品」にとどまらず「気軽に楽しめる、大人の炭酸飲料」として定着。
レジャーのお供や日常の食事の飲み物に選ばれている(らしい)。
キリンフリーの発売から1年になる今月。「休肝日」の需要を汲んだ第2弾「休む日の0.00%」も発売され、
更なる進化を続けている。
・ゼロ≠0
再現フィルムの合間の、スタジオコーナー。今週のゲストはジャーナリストの“お父さん”こと池上彰さん。
最近流行の「カロリーゼロ」という表示の“からくり”を解説した。
「実は『カロリーゼロ』と表示されている食品や飲料が、厳密に言うと『0キロカロリー』ではないのです」。
限りなく0に近いけれど、実は微量のカロリーが含まれていることがあるというのだ。
そこでご主人様が飲んでいた「三ツ矢サイダーオールゼロ」(アサヒ飲料)のラベルをよーく見てみると・・・
「0」の数字の下に「食品表示法に基づく」と小さーく書いてある。
この「食品表示法」というのが曲者なわけで。実は
「ノンカロリー」「カロリーゼロ」=「100ml当り5kcal未満」
であれば表示できるのだそうで。
「カロリーゼロだから、いくら飲んでも(食べても)大丈夫♪」と安心していた皆さん、御愁傷さまでした。
あなたのゼロは、ダイエットになりません。
一番おすすめなのは「完全無糖の炭酸水」(サントリーソーダ、ウヰルキンソン炭酸、生協連「ただの炭酸水」など)。
原材料欄に「水、二酸化炭素」とだけ書かれているのがそれです。