生理用品CM考

日本経済新聞私の履歴書」。今月はユニ・チャーム会長の高原慶一朗さん。
若い頃から起業家になることを志し、戦後の住宅需要を見込んで木毛セメント建材の会社「大成化工」を創業。
さらに新たなビジネスを模索していた頃に、故郷・愛媛県川之江市(現・四国中央市)の主力産業である紙製品の
可能性を信じて「女性用生理用品」の製造に乗り出す。
その動機には、母上や歴代のガールフレンド、そして奥様の苦労を見るだに「世の女性を楽にしたい」という思いがあったという。
・顧客は女性に限らない
大成化工の主力は建材から生理用品へと移り、社名も「ユニ・チャーム」と改められた。
さらに乳幼児用紙おむつ、大人用紙おむつ、お掃除用品、「超立体マスク」、ペット用品などなど様々な商品を
生み出し、時代の需要に応じて主力が交代していく(「パイプユニッシュ」はジョンソンに譲渡してしまったが)。
・女は自由に
で。今日付朝刊に掲載されたのは、歌手の研ナオコさんを起用した同社CMのお話。当時生理用品のテレビCMは
「食事時や子供の視聴する時間に流さない」という自主規制があった。
今回出ていたのは1976年(昭和51年)の「チャームタンポン」のCMの話。駄メイドは当時4歳、しかも「子供の見る
時間帯に流れない」というのだから、実際に見た記憶は無い。
ただし。高校生の頃、特撮CMの技術について書いた本を図書館で見た折、このCMの撮影セットについて書かれていたのを
読んだことがあるので、ストーリーは知っていた。
「月の沙漠」の歌をBGMに、ラクダ(の人形)に乗ったナオコ姫と従者の爺やが旅をしている。実はそのラクダも
「歩いてる感」を出すため、宙づりだったのだそうで。

爺「姫。ご気分はいかがですか」
姫「さわやかです」
爺「では、まだでございますか」
姫「もう、無事に通り過ぎました」
爺「私としたことが・・・」
姫「男は要らぬ心配はせぬことよ」

カックラキン大放送」(日本テレビ系)などの歌謡バラエティー番組で、コメディエンヌと歌手という2つの才能を
発揮し始めていたナオコさん。女性の好感度の高いタレントだった。
彼女は生理用品のみならず、化粧用コットンパフ「シルコット」など同社の他部門製品のCMでも活躍。
近年は同社の「チャームナップ(尿もれ吸収用)」のCMに復活していた。やっぱりユニ・チャームの“顔”ですわな。
・男も自由に
その後。時代は変わり、生理用品のCMの規制も徐々に緩やかになった。
男性タレントがCMに登場し、良い作品が出来上がったりもする。女性の社会進出と同時に、この分野に男性が進出した。

  • 「タンパックスタンポン」(タンブランズ/中央物産):松崎しげる(「活発な女の子っていいなぁ」とビキニギャルを眺める)
  • キャティ」(アンネ):桑田佳祐(桑田さんのいい意味での“女好き”っぷりが、世の女性への優しさに昇華してる感じでした)
  • 「ソフィ」(ユニ・チャーム):笑福亭鶴瓶(キモかわいい「お月さん」の被り物で人気爆発、鶴瓶さんの東京進出成功の足がかりに)
  • 「エリス」(大王製紙):玉置浩二(「エリスは安全地帯」というコピーで、後発ブランドながら知名度抜群。CM曲「碧い瞳のエリス」も大ヒット)
  • 「エリス」(大王製紙):草なぎ剛(“草食系男子”という言葉も無かった時代に「目指したのは草なぎ君」と優しさをアピール)

他にもありましたっけ?
本職が落語家である鶴瓶師匠を除けば、大半がイケメンで歌手活動をしてる人。そういう人を広告に起用すると、生理用品メーカーは
コンサートや出演映画にタイアップスポンサーとしてつき、女性ファン層にいいイメージを植え付けやすくなるのだ。
またどこか、男性タレントをCMに起用するメーカーが現れないかな。
ティーンエイジャーの思い出
その後。1980年代に花王が「ロリエ」を発売、ユニ・チャームの牙城を脅かす存在となった。
考えてみれば「ロリエ」は「子供(若者)が見るテレビ&雑誌」への広告露出度が、「チャームナップ」「ソフィ」よりも
高かった気がする。
芸能雑誌「明星」「平凡」、小学館の学習雑誌、子供〜若者に人気のドラマや歌番組・・・そういうところにロリエは
広告(雑誌の場合は「生理の日の心得を説いた啓発広告的なもの」)をガンガン出していた
(もともと石鹸メーカーだったこともあり“自主規制”に縛られず「子供の見る番組」にCM枠をとれた、という利もあったが)。
これから初潮を迎えて“現役”の仲間入りをするティーンエイジャーにブランドを印象付ける戦略としては、
花王の方が優れていたかも知れない。
・ゴールデンタイムもOK
CMタレントが誰であるかはともかく。最近の生理用品は製品自体の性能がどんどん向上し、色やデザインもオシャレになった。
それに伴い、CMや販促キャンペーンもオシャレなものになってきている。
今や生理用品CMは昔みたいな日陰者扱いじゃなく、可愛い女子アイドルの活躍の場として市民権を得ている。
メーカー各社のこれまでの努力に、敬意を表します。