流した汗は報われる!ポカリスエット物語

ルビコンの決断」(テレビ東京系)。
今週は(番組スポンサーでもある)大塚製薬の「ポカリスエット」開発秘話を、辰巳琢郎さん主演の再現ドラマでおくる。
・病気の時に飲める飲料
1970年代後半。大塚グループ創業者の孫で、当時徳島工場長だった大塚明彦氏(辰巳琢郎)は
「オロナミンC」に続く“新たな柱となる商品”の開発を始めていた。
そんなある時、「オロナミンC」の開発に関わった“味の天才”播磨六郎技術部長(山田明郷)から
「飲める点滴液」の開発話が来る。
きっかけはメキシコに視察に行った播磨部長が現地の生水で食あたりを起こし、下痢による脱水症状に悩まされた話。
病院で薬を飲むにも、ミネラルウォーターなんぞ無いから炭酸水(たぶんコーラか何か)で飲むしかない・・・
そんなときに飲める飲料を開発したい、と。
・水分のスペシャリスト
播磨部長は以前、長時間の手術を終えた医師が疲れを癒すため「点滴液を直飲みする」場面を目撃したことがある。
大塚製薬は当時から、病院で手術や点滴に使われる点滴液や生理食塩水のトップシェアメーカーだった。
その技術をベースに、汗や下痢で失われた体液のミネラルを補給できる「汗の飲料」が研究されることになったのは
話が出てから3年後、明彦氏が社長に就任した時だった。
・スポーツの汗とサウナの汗は違う
播磨部長は若手の高市晶久研究員(賀集利樹)とともに、サウナや山歩きで採取した汗を研究する。
が。補給すべきカリウムイオンなどは独特の苦みがあり、飲みづらいという欠点があった。
そんな時。他の粉末ジュースを開発していたチームの試作品を飲んだ明彦社長が「これだ!」とひらめいた。
グレープフルーツなど柑橘類の苦みが、主成分の苦みを緩和したのだ。
・赤字覚悟の決断
こうして1980年(昭和55年)4月「ポカリスエット」発売。しかし同社役員も「何じゃこれは」「マズい」という反応。
そして街で試飲会を開いても、今まで飲んだことも無い味に人々は戸惑い、感想は「マズい」。
大失敗に終わってしまった。
「いいものを作ったのに、何故売れないのか」その原因を徹底的に考える。
そこで「ポカリスエットがいちばん『おいしい』と言ってもらえる場所」へ、サンプルを出すことにした。
スポーツ少年団の練習、銭湯、猛暑の街中・・・あらゆる場所にポカリが無料で配られた。
40億円分のポカリスエットを無料配布するという、採算度外視の大サービス。
「大切なのは今の利益ではなく、将来です。今タネを蒔いておけば、いずれ大きな花が咲く筈です」と明彦社長。
この作戦が成功し、翌1981年(昭和56年)夏からポカリスエットは爆発的に売れ始めた。
・奴らの信条
その後も、このサンプリング作戦方式で「カロリーメイト」「ファイブミニ」「エネルゲン」「ソイジョイ」などなど、
新たな栄養食品を生み出して告知してはヒットさせている。
大塚製薬のポリシーは「役員会で90%『うまい』といわれたものは商品化しない」。
それだったのか!大塚製薬が今までゲテ・・・もといユニークな商品を売り出してきたのは。
今まで誰も作らなかったものを創り、パイオニアになる。
悪く言えば「いつもひとヤマ当てようとしている」感じ?
今ある栄養食品の大半を最初に創り出したのは、同社だ。機能性飲料の分野も、今や3000億円市場である。
しかし「体にいいんだから、多少まずくても売れる」と思っているふしがあるので、
味の面では後発のお菓子・飲料メーカーに負けっぱなし。今後はそこを何とかしないとね。
・世界戦略へ
そして現在、ポカリスエットは世界16ヶ国で発売されているという。
最近はインドネシアで、ラマダン(断食)に合わせてサンプルを配ったり、デング熱の患者が居る病院に売り込んだりと
日本で培った作戦により認知度を上げているそうで。
次回は是非同社の「カロリーメイト開発物語」を見てみたい。番組スポンサーなんだし(笑)。
・以下、個人的思い出話
ワテがポカリスエットと出会ったのは、そう・・・1981年(ワテ小学3年生)ぐらいの頃でした。
ウチの両親が趣味でテニスクラブに通っていて、そこに例のサンプルが配られていたのです。
家に持ち帰られた缶入りのポカリスエットを見た感想は「青い缶?中身は何だろう?」
たとえばコカコーラは赤、スプライトなら緑というように、従来の商品にはだいたいシンボルカラーというものがある。
けれど「青」というのは、その時どこも使っていなかった(ような気がする。「ファンタ」の看板ぐらいか)。
そして飲んでみた感想は「何じゃこりゃ」。
甘い、という以前に塩辛い・しょっぱいのだ。今までの缶ジュースにない感覚である。
しかし。ほどなくポカリスエットの真の実力を思い知ることとなる。
その頃のワテは体が弱く、年に2〜3回は熱を出して学校を休んでいた。その時にポカリスエットが役立ったのだ。
飲み方は缶入りであったり、粉末を水に溶いたストローボトルであったり、500mlのガラス瓶であったり。
大人になった今は、下手な風邪薬より先にまずポカリスエットを買い求めます。そういう人は多いです。
−「風邪の時はポカリスエットじゃなきゃダメなの?他のは?」
現在出ているスポーツドリンクの大半は「カロリーオフ」を売りにしています。
ポカリスエットはカロリーが高めなので、発熱や胃腸病などで食欲のないときのエネルギー補給に向いているそうで
(逆に「日常で飲むにはカロリーが高すぎる」ので、注意しなきゃイカンな)。
自分の運動量・症状に合った製品を選びましょう。ちなみに今年、ポカリスエットより強力な「経口補水液OS-1」も登場。
そういえば。昔あった粉末固形飲料「C-MAX 1000」って、もう作ってないの?あれ、風邪ひいたときのビタミンC補給に
助かったのに。