大草若の小さな家

今週のNHK連続テレビ小説ちりとてちん」。
このところ「常打ち小屋とは」「加藤虎ノ介」といった検索ワードから、この日記にお越しいただく方が増えています。
少しでもお役に立てれば幸いです。
・底抜けにめでたい
先週のラスト。小浜市民会館で小草若兄さん(茂山宗彦)が、底抜けに見事な復活を遂げた。
で、イベント「箸のふるさと小浜」も盛況のうちに終わり・・・和田塗箸店で打ち上げパーティーをしている場面から
今週のお話が始まる。
いつも強面の正典お父ちゃん(松重豊)も「底抜けに」のポーズ!「わしも『そこぬけに』言うてみたいんや♪」。
盛り上がる家族の中、ふてくされている人が約1名―そう!“五木ひろしライブ”に失敗した小次郎おじちゃん(京本政樹)。
「ミュージックをスタートさせたら、五木ひろしがぽーんと出てきて格好良く歌う予定やってんや!」
しかし家族は「五木ひろしが来ていた」ことを信じられる筈も無かった。
・3度目の正直
「『ふるさと』聴きたかったわー」真偽の程は別として、心底から残念がる糸子お母ちゃん(和久井映見)。
お父ちゃんがテープを止めた後、どこかから歌声が・・・
「ああ〜誰にも〜ふるさとがある〜♪」何と!五木ひろしさん(本人)が、ギターを爪弾きながら現れたのだ!!
一同が呆然とする中、小次郎おじちゃんは「見てみい!」という顔(笑)。
・よっぽど好きなのか
イベントで歌う予定だった五木さんだが、小草若兄さんの落語が底抜けにウケていたので「ここで出てったら野暮かな、と」
こっそり会場を去っていたのだ。
その後、竹谷さん(渡辺正行)に「和田塗箸店に寄って、一曲歌ってあげて、小次郎さんの顔を立てて欲しい」と頼まれて
ここに来た・・・というわけだ。
落語で五木さんをネタにした若狭@喜代美ちゃん(貫地谷しほり)は「すいませんでした!」と平謝り。
お母ちゃんは感涙、もう一度「ふるさと」を歌って欲しいとリクエスト。「底抜けにあつかましい」要求でしたが(^_^;)
そこは天下の五木ひろし。快諾し、改めて熱唱するのでありました・・・。
・そこぬけにアホですっ!by四草
さて。若狭ちゃんに連れ戻された小草若兄さんを、徒然亭の兄弟弟子は温かく迎えた。
若狭ちゃんはイベントで助けられた経緯を話し、小草若兄さんを「生まれながらの芸人さんなんやな、て思いました」と賞賛。
やっぱり「草若」の名を継ぐのは、この男しか居ない。
「俺は、親父みたいにはなられへんねんて」小草若兄さんは涙を流す。「でも“新しい草若”になりたい、思うてんねん」
“小さい草若”ではなく、“新しい草若”に。その道が、やっと見えてきた。
・ラスボス登場
一門は天狗芸能の鞍馬会長(竜雷太)のもとへ出向き、改めて小草若兄さんが「草若」の名を継いでみせると誓う。
しかし鞍馬会長は「わしゃもう知らん」と突き放す。「常打ち小屋の話・・・忘れい」。
草若師匠(渡瀬恒彦)が死の直前「常打ち小屋を作るため、徒然亭屋敷を売る」と言っていたことを会長から聞かされ、
弟子たちは衝撃を受ける。
・バレたー!
若狭ちゃんと奈津子さん(原沙知絵)が居酒屋「寝床」で食事をしているとき、熊兄(木村祐一)と咲さん(田実陽子)が
小次郎おじちゃんの宝くじが当たったことに触れ「いつ結婚すんの?」「結婚披露宴の膳は俺に任してな」と言う。
「当たったんですか?小次郎の宝くじ!」そう、奈津子さんは宝くじのことを知らなかったのだ!
大阪に帰って来た小次郎おじちゃんに「何か・・・私に隠してること無い?」と詰問する奈津子さん。
おじちゃんは「イベントの五木ひろしのギャラに使った」と白状するが・・・それ以来、奈津子さんは口をきいてくれない。
200万を使われたことを怒っているのではない。一言の相談もしてくれなかったことが悔しいのだ。
・初めてでも美味しく
そんな彼女のもとに、小梅婆ちゃん(江波杏子)がやって来た。お婆ちゃん曰く、小次郎さんは「宝くじの200万を元手に
イベントを成功させて“小浜の男”として認められてから」結婚したかったのではないか、という。
それが彼の“男のプライド”である。普段「俺にはプライドなんか無い」と言っているおじちゃんだが「人一倍プライドが高い」。
「すまんかった」徒然亭屋敷に避難していた小次郎さんが帰宅すると・・・奈津子さんが「NHKきょうの料理」のテキストを
首っ引きで、肉じゃがを作っていた。「コレ持って、迎えにいこうと思ってたのに」。
奈津子さんが“肉じゃが女”になってしまった(笑)。料理下手だという割には、ずいぶん美味そうな出来栄えで。
・呪いからの開放
後日。A子@清海ちゃん(佐藤めぐみ)が、秀臣さん(川平慈英)と一緒に和田塗箸店を訪れた。
「私に伝統若狭塗箸を教えてください!」箸工場を継ぐにあたり、伝統塗箸のことをしっかりわかりたいというのだ。
大学もキャスターの仕事も挫折し、中途半端な自分を格好悪いとも思っていたA子ちゃんだったが、今は真剣に塗箸作りに
向き合っている。その人生、新たな模様を塗り重ねる工程に入ったようです。
塗箸作りの修行を始めて、しばらくした頃。A子ちゃんは“呪いの石”こと、きらきら光る石のペンダントを取り出し・・・
作業台の上で打ち砕いた!
(金槌を振り下ろすときの表情が、まるで2時間ドラマの殺人犯のようだった)
挫折した自分を「格好悪い」と思った気持ちが、粉々に打ち砕かれた。
・本当に必要なのか
東京に行った磯七さん(松尾貴史)から、近況報告の手紙が届いた。関東の常打ち小屋(いわゆる寄席)で江戸落語を聴き、
すっかり通になったという。東西制覇ですな。
その一方で「言うても詮無いことやけど」大阪に常打ち小屋が無いのが本当に惜しいという。
その手紙を読み、草々兄さん(青木崇高)は「やっぱり常打ち小屋設立を諦めるべきではない」と主張する。
が。常打ち小屋を作れば、徒然亭一門は天狗芸能から干される可能性もある、と草原兄さん(桂吉弥)は懸念する。
天狗芸能に頼らずに、弟子たちだけで設立する・・・というのも現実には無理。
小草若兄さんは、瀕死の母・志保さん(藤吉久美子)をほったらかして常打ち小屋の設立に没頭した父の姿を見ているので、
半ばトラウマ状態。
四草兄さん(加藤虎ノ介)は常打ち小屋があると「黙ってても出られる場所があったら、落語の腕を磨かん奴も出てくる」と指摘。
常打ち小屋の件は再び「雲を掴むような話」になってしまった。
若狭ちゃんは常打ち小屋を見たことが無いので「ようわからんのです」。イメージが掴めない。
・あまりにもリアルな妄想
もし天狗芸能から干されれば・・・小草々くん(辻本祐樹)が、10年前の(草若師匠がひきこもっていた頃の)草々兄さんの
ような状態になってしまうだろう(若狭ちゃんの妄想の中で、草々兄さんが師匠の格好をして小草々くんが草々兄さんの
格好をしていた)。「いやですー!」涙ながらに叫ぶ若狭ちゃん。鞍馬会長の言うとおり、今は『常打ち小屋を作る時期』では
ないという意見。
草々兄さんは苛立つ。「いつになったら、その『時期』が来んねん!」・・・それは誰にもわからなかった。
・天の啓示
そんなある日、若狭ちゃんのもとに電話が入った。
「えっ!お父ちゃんが?」前作みたいに、お父さんが脳出血で倒れるのか?と思いきや。
和田家では何故か、祝宴中だった。何と正典お父ちゃんの塗箸が「日本ものづくり大賞」の「内閣総理大臣賞」を受賞したのだ!
娘も息子も、それぞれの仕事をしているし「お母ちゃん、こんなに嬉しいことはない・・・!」糸子お母ちゃんは涙ぐむ。
家族のために毎日頑張ってきたお母ちゃんにとっても、この上ない栄誉でありました。
そこへ小次郎おじちゃんと奈津子さんも乱入、「結婚します!」と宣言(ただし、これには誰も驚かなかったが)。
この家族がこれまで塗り重ねた苦労や失敗が、研いで磨いて、美しい模様として完成しました。
と。若狭ちゃんの心の中に、正太郎爺ちゃん(米倉斉加年)の言葉が強く響いてきた―
「喜代美。これから仰山(ぎょうさん)笑え」と。これはまさに“天の声”だった。
・毎日の積み重ね
翌日。若狭ちゃんが箸工房で落語のテープを聴いていると、A子ちゃんがやって来た。
A子ちゃんは製作途中の塗箸と、その中に塗った例の石の粉末を見せた。きれいな模様を出すために、頑張っているところだ。
「B子に負けんように、頑張ろう思うとる」とA子ちゃん。落語家になったB子ちゃんにとっては、毎日落語を聴いて
笑っていたことが“きれいな模様”になっている。それに負けないよう、自分も頑張りたいというのだ。
「ありがとう」若狭ちゃんの頭の中で、何かが繋がった。「ありがとう、A子!」やっぱり、常打ち小屋は必要だ!
・c'est l'amour(それは愛やで)
草若師匠夫妻が常打ち小屋にこだわった理由について、菊江さん(キムラ緑子)は「夫婦共通の夢やったからな」と言う。
ところが熊兄に言わせると、それだけでは無いというのだ。
彼は愛妻・咲さんとの馴れ初めに触れ、「寝床」開店の経緯を語る。雇われ料理人だった熊兄に「独立を決意させたもんは・・・
“愛”や」。
その頃咲さんは、同じビルの店のホステスだった。男に騙されては捨てられ、安酒をあおる彼女を放っておけなくなった熊兄は
「こいつの『寝床』になれる男になりたい」と独立を決めたのだそうで。
咲さんの勤務した店が「アムール」じゃ無いことを祈りたいが(汗)。
つまりは「草若夫妻も、何かを守りたいという気持ちに衝(つ)き動かされていた」のではないか、と。
常打ち小屋計画のせいでおかみさんが寂しく死んでいった・・・と思っていた小草若兄さんは、複雑な心境になるのであった。
・それでもやるしかない
実家から戻った若狭ちゃんは兄弟子たちに、常打ち小屋の必要性を説いた。
子供の頃。学校から帰って、毎日落語のテープを聴いていた日々。嫌なことがあっても、面白い噺を聴いて笑えば元気になれた。
みんなに笑ってもらうのが、落語家の仕事。仰山の人に毎日笑いを提供できる場所を、大阪に作りたい。そう思ったのである。
納得した兄弟子たちも揃って、改めて鞍馬会長にお願いしに行く・・・が「お前らみたいな者が5・6人寄ったぐらいで、
草若が死ぬまでよう作らんかった常打ち小屋、できると思うてんのか」と、相変わらず冷笑される。
「できるもんやったら、やってみい」。
・さよなら、ヒグラシ御殿
一門のみんなが貯金を出し合ったが、およそ頭金にも足りない金額。
と。隣近所の徒然亭ファンの皆さんから、出資金が寄せられた。計画を聞いた和田家をはじめ、小浜市の人々からも
寄付が集まった。
正典お父ちゃんからの寄付には、草々&若狭夫妻の「二人癖騒動」の“罰金箱”に貯まった100円玉もあった(笑)。
小次郎おじちゃんは、例の200万円を差し出した。五木さんが「イベントで歌わなかった」ことを理由に、ギャラを
受け取らなかったのだ。
糸子お母ちゃんからは、応援の大漁旗が。「がんばれー」・・・どんな激励やねん。
弟子たちの思いは固まった。「何年かかってでも、絶対に建てよう」。
「俺・・・売るわ。この家、売るわ」小草若兄さんは徒然亭屋敷を売りに出す決意をした。
思い出の詰まった家を、本当なら手放したくはない。けれど「そうせな、あかんねん」。
「最後に、この家で落語会やりませんか」と若狭ちゃんが言い出した。「師匠の思い出がいっぱい詰まったこの家で、
師匠に見守られて、落語がしたいんです」。
・眠ってなんぞ居られない
というわけで。「草若邸お別れ落語会」は、その年の秋に開催されることになった。
本編とは関係ありませんが。この時期、小浜市北朝鮮拉致被害者の地村保志さん・浜本富貴恵さん(後に結婚)が帰国されました。
落語会開催の噂は上方落語界に広まり、土佐屋一門、万葉亭一門、鏡一門のスターも駆けつけた。
当日は落語ファンが大挙押し寄せ、居間から庭まで超満員。急遽「寝床」から椅子を借りる。
いよいよ開演。前座の小草々くんが登場した時・・・一陣の風が吹いた。草若師匠は千の風になって、
世間で落語のある所を吹き渡っているのだろうか。
秋風のそよ吹く中。青空の下の落語会は、思いがけず気持ちのいいものであった。
徒然亭一門の落語が終わると、尊権兄さん(波岡一喜)が飛び入りで創作落語を披露。その後は我も我も!と、落語家たちが
次々と持ちネタを披露し続けた。
その頃、A子ちゃんの塗箸も完成した。呪いの石は金銀砂子の模様に姿を変え、夕日に輝いていた。
・受け継がれ生きている
観衆の中には、鞍馬会長の姿もあった。「出来たやないか。誰でも気軽に入れて、噺家が腕競う、常打ち小屋が」草若師匠の
遺影の前で、会長はニヤリと笑った。
「この時を待ってたんや」落語はみんなのものや、ということを会長もわかっていたのだ。
その日の落語会は、いつまでもいつまでも続いた―まるで草若師匠が、徒然亭屋敷との別れを惜しむように。
映画の「フィールド・オブ・ドリームス」の野球場さながらに、「“それ”を作れば、彼はやって来る」という現象が発生した。
芋たこなんきん」の町子先生の言葉を借りれば「死ぬ前に言葉を残していた人は、死んでからも喋れるんやね」。
・・・草若師匠の落語は、本人が死んだ後も生きてますよ。スゴい!
次回。徒然亭若狭、最後の高座へ。番宣スポットでは「お母ちゃんになります!」という衝撃発言が!“若狭の娘”登場か!?
・今週の蛇足
町子先生の話が出たところで。最近妄想したネタ「こんな『ちりとてちん』なら見てみたい!」
他の朝ドラのネタとコラボレーションしたら、こんな風になる!?

  • 雑誌「上方文化」の取材で、草若師匠と小説家・花岡町子先生が対談する
  • 徒然亭一門が岩手・盛岡で落語会をする(お宿はもちろん、加賀美屋旅館)
  • しかも加賀美屋旅館で、若狭ちゃんが「ざしきわらし」に遭遇する
  • 茶店「シャトー」に設置されたテレビで落語の生中継を見て、落語家になる決心をする草若師匠(推定10歳前後)