底抜け脱走ゲーム

今週のNHK連続テレビ小説ちりとてちん」。小草若ファンには、底抜けにハラハラドキドキの一週間でした。
月曜日(10日)の朝の放送の後、日本海で巡視船「わかさ」が漁船と衝突したというニュースが。
ドキっとするやないかい!徒然亭若狭も、周囲の人と衝突しまくってるのに。
・登校拒否状態
理容師組合の落語会が開催され、徒然亭小草々@木曽山くん(辻本祐樹)の初高座も大成功で無事に終わった・・・と思いきや。
それが無事には済まなかったらしい。
トリをつとめる予定だった小草若兄さん(茂山宗彦)が急病で倒れ、高座に穴を開けてしまった。幸い、天狗座の出番を終えて
早めに駆けつけていた草々兄さん(青木崇高)が代役をつとめ「愛宕山」をかけて事なきを得た。
どうやら兄さんの病気は詐病のようである。
そして。12月にも「寝床寄席」の開催が決定。そこでもトリは小草若兄さんがつとめることになっていたが、またも欠席!
高座すっぽかす所だけ父親に似てどうする。それ以来、小草若兄さんは大阪から姿を消してしまった・・・!
・新たな夢の模様
一方、小浜市の人々も動き出していた。
正典さん(松重豊)は正平くん(橋本淳)に、勝山の恐竜博物館の学芸員になる手段として「教員枠」があることを教えた。
学校の教師として勤務する人が、希望を出して異動すればなれる・・・ということを、息子のためにわざわざ調べたのだ。
大学で教員免許をとっていた正平くんは、小浜第二小学校の先生として採用される。
A子@清海ちゃん(佐藤めぐみ)も父・秀臣さん(川平慈英)の話を聞いて以来、箸工場で精力的に働いている。
体調を崩していた母・静さん(生稲晃子)も退院。もしかして病気になったのは、A子ちゃんのことが心配だったのが原因?
・跡目争い
時は流れて、2002年の春。小草若兄さんが帰ってこないまま、草若師匠(渡瀬恒彦)の三回忌を迎えた。
法事の日、天狗芸能の鞍馬会長(竜雷太)が徒然亭屋敷に現れた。草々兄さんが常打ち小屋設立の件を相談すると、会長は
「一門の誰かが『徒然亭草若』を継ぎ、襲名披露興行をすること」という条件を突きつける。
草若の名を継ぐべき男・小草若兄さんが居ない今、彼を切り捨てて他の弟子が襲名するべきか。ならば、誰が襲名するべきか?
筆頭弟子・草原兄さん(桂吉弥)は襲名を拒否、草々兄さんを後継者に指名する。が、「それなら自分にも権利がある」と、
四草兄さん(加藤虎ノ介)が待ったをかけた。
そして草々兄さんも、簡単には了承できない。「小草若が継ぐべきもんなんや」と。
それぞれの腹の中に、いろんな思いがある―弟子たちは大いに苦悩するのであった。
・新たな敵“マンション女”
鉄砲勇助改め小草々くんは「小草若師匠が居てはれへんようになった所から全部、四草師匠の算段やったりして」
と言うが、若狭ちゃんには小草若兄さんが失踪した理由がわからない。
奈津子さん(原沙知絵)はそれを「喜代美ちゃんのせいやないの?」と指摘。思えば年季明け間近の頃、「小草若兄さんの
マンションに行く」と言っておきながら、結局はライバルの草々兄さんと結婚。
その他もろもろ、草々兄さんに勝てないという不満が鬱積し、耐え切れなくなって失踪した・・・と。「喜代美ちゃん、案外
“肉じゃが女”よりタチ悪いな」。
「“マンション女”!」咲さん(田実陽子)も、若狭ちゃんを責める。マンション女て・・・。
・「中央勧業銀行」の合併直前
その頃。A子ちゃんの発案で、名産品をアピールするイベントの開催が決定。長さ2.6メートルという長ーい箸木地に、
来場者がみんなで模様付けをする・・・という「巨大塗箸」を作るというのだ。
小次郎叔父ちゃん(京本政樹)も手伝いを申し出るが、「お前に出来ることは『邪魔をせんこと』や」と
竹谷さん(渡辺正行)に言われてしまう。
小次郎叔父ちゃんは大阪に戻り、この間買った宝くじの当選番号を確認・・・と、めでたく一等をゲット!
・・・といっても。「レトロ宝くじ」と銘打った少額の宝くじで、一等賞金が200万円(いつの時代の相場やねん)。
ともあれ、これで奈津子さんと結婚できる!・・・筈だったのだが。小次郎叔父ちゃんは宝くじの賞金を貯金に回さず、
イベントを盛り上げるゲストを呼ぶために使うことにした!
そのゲストとは・・・福井が生んだ大スター・五木ひろし!このドラマ3度目の登場である。今度こそライブ開催か?
しかし。家族や竹さんは、この話を本気にしようとしない。これが大きな間違いのもとになる・・・!
・堂々巡りの会議
草々兄さんが、常打ち小屋設立のため草若の名前を継ぐという苦渋の決断をした。ひとり反対する四草兄さんを、草原兄さんが
説得しにかかるが・・・四草兄さんは頑として認めようとしない。「僕ではあかんのですか」。
そんな四草兄さんに「何で自分のことばっかりやねん!」上方落語会のこと、一門のことを考えろ、と草々兄さんは憤る
(その横で、若狭ちゃんがうなだれていた。「自分が言われとる気して」・・・あんたも自分のことばっかりかい)。
結局、未だに話はまとまらない。
・とりあえず北へ行け
そんな中。ブラック化した小草若兄さんが小浜に現れたのである・・・!
兄さんは魚屋食堂を訪れ、久しぶりに友春さん(友井雄亮)と再会。イソギンチャク、もとい小草若兄さんを気遣う友春さんに
「この通り、元気でございますがなー」高速底抜けを踊ってみせた。「焼き鯖くれ!」
本人曰く「気ままな一人旅」。小銭稼ぎにバイトをするも、もうひとつ自分に合わない。
腕を上げた友春さんの焼き鯖を食べて、小草若兄さんは呟く。「良かったな・・・自分に向いてるもんが見つかって」。
かつて落語家修行経験のある歌手・嘉門達夫師匠は、破門された後に旅に出たという。まさか。小草若兄さんも、落語家を
やめるつもりで居るのか・・・?
ダースベーダーのつもりか
小草若発見の報せを聞き、若狭ちゃんが小浜に駆けつけた。そして説得するが、小草若兄さんは大阪には帰らないという。
草若襲名の話にも「どうでもええわ」と素っ気無い。自分は落語家に向いていない、と。
しかし若狭ちゃんは、小草若兄さんが落語を愛していることを知っていた。伝統を守りたいと願っていることを知っていた。
テレビ出演をする若狭ちゃんに「テレビに出ることで、落語家という仕事が忘れられずに済む」と励ましてくれたじゃないですか。
「覚えてへんな」冷たい眼差しで、小草若兄さんは言う。「俺のことはもう、ほっといてくれ」
ダークサイド小草若・・・底抜けと言うより、底なし沼やな。
・いやです=わかりました。
翌日。小草若発見の報せが、兄弟子たちの知るところとなった。「何ですぐ知らせへんねん!」
草々兄さん曰く。小草々が「見つかった」と言うものだから、また嘘かと思ったのだ。ややこしい奴やな(汗)。
小浜に行こうとする草々兄さんだったが、四草兄さんがそれを止めた。「あんなアホのこと思うてるんやったら、行くな言うてるねん!」
「落語は下手やしアタマは悪いし。何でこんな奴が兄弟子なんやろ、と。夕日に溶けて無くなって
しまえばええのに・・・て、ずっと思てました」思てたんかい。
「どっか行ってしもて、せいせいしてんのに。何でみんなして探そうとしたり、見つけ出して草若を襲名さそうとしたり
するんですか」四草兄さんは涙ぐむ。「もう、放っといたって下さい・・・!」
草々兄さんの襲名に反対したのは、自分が襲名したかったからではない。“一生懸命なアホ”である
小草若兄さんの苦悩を毎日目の当たりにして、案じていたのだった。これもまた、ややこしい感情やな。
「この上、草々兄さんに草若の名前までとられてしもたら、小草若兄さんホンマに死んでまう!」そこまで言うと四草兄さんは、
打ち震えながらむせび泣くのであった・・・。
・それがしんどい、それがおもろい
夜。草原・草々・四草の三人は居酒屋「寝床」に居た。
これまで小草若兄さんに「頑張れ、頑張れ」と言い続けてきた草々兄さん。が、自分が小草若兄さんを傷つけていたことに
草々兄さんはショックを受けていた。
その時。草原兄さんが「草若襲名を辞退した本当の理由」を打ち明けた―「何で草原やねん、と言われるのが怖かった」というのだ。
芸歴が長いだけで華の無い芸人。襲名したとしても「草々や四草の方が、よっぽど華あるわ」と
陰で言われるのが怖かった・・・と。
そして。辞退したら辞退したで、その後もくよくよと悩んでしまうのである。
「そらな。こんだけバラバラな人間が集まって、おんなじ道を志してたら・・・お互い腹の中でいろんな事考えんで。
それがしんどい」草原兄さんは溜息をつく。そして「けど、それがおもろい」と笑った。
「もろた!」後ろから声が。キム兄・・・もとい、熊兄(木村祐一)だった。「今の、新曲の歌詞にもろたでぇ!」
「それがしんどい〜♪それがおもろい♪」ギターを爪弾きながら、例の調子で歌いだす。咲さんもうっとり(笑)。
弟子どもの腹の中の邪(よこしま)な思いがクローズアップされてすぐ、熊兄のジャイアンリサイタル
中和するあたりは、さすがです(笑)。
「やめてください。耳について離れんようになりますから」と四草兄さん。相変わらず、お客さんには不評のようで(笑)。
・彼の中のビー子
同じ頃。若狭ちゃんが起き出して来ると、和田家に小草若兄さんが来ていた!小浜を出ようとしていたところを、
買い物中の糸子お母ちゃん(和久井映見)が捕獲したというのだ。お母ちゃんグッジョブです。
草若の名を「草々が襲名したらええやん」と相変わらず投げやりな小草若兄さん。「俺はイライシャ・グレイや―
(電話を発明したものの)特許の出願がグラハム・ベルより2時間遅れて、発明者として名前を残すことができへんかった、
間の悪ーい男や」。それと同じで、一足先に弟子入りした草々兄さんとの差は、永遠に縮まらないのだ・・・と。
小草若兄さんは大阪に戻る条件として、若狭ちゃんに「草々と別れてくれ」と言い出した。これはさすがに
「いけず(意地悪)で言うただけや」。
そして「ごめんな、喜代美ちゃん」小草若兄さんは立ち去った・・・“喜代美ちゃん”に、ほんの少しだけ未練を残しつつ。
・箸工房の思い出
小草若兄さんは帰りがけに、正典さんの箸工房を覗く。そして以前、正典さんが「父の背中は遠くなるけど、それでも
追いかけずには居れんのです」と語っていたことを思い出したのだった。
その後、A子ちゃんが和田塗箸店を訪れた。イマイチ人気の薄い「箸のふるさと小浜」のイベント集客のため、B子ちゃんに
徒然亭若狭としてゲスト出演してもらいたいというのだ。
「私なんかで良かったら」と、喜んで引き受ける若狭ちゃん。小草若兄さんにも聴いてもらうべく、創作落語作りに乗り出す。
草々兄さんと自分が「小草若兄さんの“ふるさと”を奪った」のだろうか・・・と若狭ちゃんも苦悩したが、小梅ばあちゃん
江波杏子)は「誰にも奪うことのできん、小草若ちゃんの“ふるさと”が、きっとある筈や」と指摘する。
・まるでドッキリのようだ
5月、小浜市民会館のイベント当日。来場者の中に、小草若兄さんの姿もあった。
小草若兄さんは、この会館の会議室に見覚えがあった・・・いつか来た場所、のような気がする。
そして若狭ちゃんの創作落語が始まった。今日のネタは、かつて五木さんが和田塗箸店に箸を買いに来た日のエピソード。
出番を待つ五木さんも、その落語をテレビモニターで聴く。そうとも知らずに、若狭ちゃんは
「マネージャーに財布を預けたんですけど・・・あの〜ひと〜は行って行ってしまった♪」物真似を交えて語る。
「私、歌なんか歌ってませんけどね?」五木さんが楽屋でツッコミ!
若狭ちゃんはさらに続ける。「手の込んだ詐欺と違うか?」
「詐欺!?」五木さんは眉をひそめた(天下の五木ひろしが、それしきで気を悪くするとは思えないのだが^_^;)。
・テープが録音された日
焦った小次郎おじちゃんは、若狭ちゃんの高座に乱入して強引に中断させた(ここから小草若兄さんに「帰ってきてくれ」
というメッセージを込めたエエ話をする、という段取りだったのに)!
おじちゃんは五木さんが怒らないうちに舞台へ引っ張り出すべく「ふるさと」のミュージックテープを再生。
が!テープから流れたのは

『野掛(のがけ)、今の言葉で言いますと、ハイキングやピクニック・・・』。

「ふるさと」ではなく、草若師匠の落語!若狭ちゃんが落語を執筆しながら聴いていたテープが、そのまま入っていたのだ!
父の声を聴いた小草若兄さんの心に、幼い頃の記憶が蘇る―昭和43年10月。当時3歳だったチビ小草若@仁志くん(森川翔太)は、
落語会をする父とお囃子方の母に連れられて、小浜市民会館にやって来たのだった。
・自らの意思で戻る
若狭ちゃんも事態を収拾できず、会場がぐだぐだになってしまった。と、高座に向かう人影が。小草若兄さんだ!
それはまるで、若狭ちゃんの初高座が大失敗だった後「サプライズゲスト」として飛び入りした父・草若師匠の姿そっくりだった。
演台の前に座るなり「そーこーぬーけーに!お待たせいたしましたがなー!」と、ひと声叫んで
観客を振り向かせた(このあたり、狂言師でもある「中の人」茂山もっぴーの鍛え抜かれた発声が生かされている)!
「底抜けにー!」のギャグで小学生の心をがっちり掴み「嬉しいな、乗りのええお客さんで」。一発ギャグがあると強い!
小草若兄さんは黒いコートを羽織っぽくパッと脱いで、「はてなの茶碗」を語り始めた。放浪の旅の間に、完成してたんか。
ええぞ小草若兄さん!あんたにダークサイドは似合わへん!そこぬけにシビレましたがなー!
結論:落語こそが彼の帰る場所、まさに“ふるさと”だったのだ。誰にも奪うことの出来ない、彼だけの“ふるさと”。
次週、徒然亭最後の聖戦。常打ち小屋設立を賭けて闘います。
・ハマり役です
今週の主役にしてMVP、小草若兄さんと「中の人」茂山“もっぴー”宗彦さん。リアルもっぴーは“チビ小草若”の頃には
狂言師として稽古を始めていたのであります。以前「スタジオパークからこんにちは」にご出演された際、父・茂山七五三さんから
「釣狐」を教わった際のエピソードを語っておられましたが・・・その思いは、ドラマの小草若兄さんとも重なるところが
あるようで。先述の「スタパ」をご覧になった方は、今週の「ちりとてちん」を涙なしには
見られなかったことでしょう(笑)。