誕生!徒然亭小草々

今週のNHK連続テレビ小説ちりとてちん」。物語は西暦2000年の夏。
暗雲がたちこめる予兆として、死にかけのヒグラシが「ジジジジジ!」と悶絶する啼き声が、効果的に使われています。
・次の高座は
磯村屋さん(松尾貴史)から、10月2日に理髪店組合で落語会をやるので徒然亭一門に出て欲しいという依頼が来た。
そして。その落語会で、新弟子の鉄砲勇助@木曽山くん(辻本祐樹)の初高座をやってはどうか、と提案する。
時期的にもちょうどいい、ということで・・・初高座決定。
ただ、当日草々兄さん(青木崇高)は天狗座での出番がある。そこで代役に小草若兄さん(茂山宗彦)が名乗りを上げた。
しかも。演目は、難しいネタ「はてなの茶碗」をかけるという。近頃、草原兄さん(桂吉弥)の下で「底抜けに稽古してる」
とは言え、大丈夫なのか・・・?
・「算段」と「嘘」は違います
初高座に向けて、木曽山くんの稽古が始まった。が、彼は緊張しているのか、どうにも挙動不審である。
奈津子さん(原沙知絵)は相変わらず「怪しい」と言い、小草若兄さんは「“落語研究会出身”いうのも嘘と違うか?」と疑う。
木曽山くんが稽古を避けようとする理由を、本人に聞くべきか迷う若狭@喜代美ちゃん(貫地谷しほり)。だが、四草兄さん(加藤虎ノ介)は
「あいつの答えが嘘かホンマかわからんのに、追求しても無駄や」とバッサリ。
おかみさんにできることは、初高座を喜んでやること。今はそれだけなのだ。
・今週の主役その壱
「最近、テレビのバラエティ番組でも何でも、テロップ(字幕)いうもん出よるやろ。俺、アレが嫌いでな。
『ここ、笑うとこでっせ』いうて合図出しとるわけや。それが無かったら、笑うとこもわからへんような
若いもんが増えてるちうこっちゃろ・・・嘆かわしい話やで」とは、磯村屋さんの台詞。名言だ。
その点、落語というのは「聴く側の想像力が要求される笑い」だと、磯村屋さんは言う。もちろん想像力をかきたてるには
噺家の鍛錬も必要だが、聴衆も感性を働かせなければならない。落語というのは、洗練された高度な芸なのだ。
最近の若い人は「演者の話をじっくり聴く」ほど忍耐力も時間も無いので、笑いに対する反応も鈍くなっている。
これは確かに嘆かわしい話だ。
実は磯村屋さん、夫の介護で体を壊した姉を看病するため、東京に移住することになったのだ。
上方落語が気軽に聴かれへんようになるのが・・・ホンマに辛いねん」。それだけに。今回の落語会には、思い入れがある。
・たったひとりの姉だから
そんなある日。正平くん(橋本淳)が、徒然亭屋敷に転がり込んできた。父・正典さん(松重豊)と喧嘩して、家出したというのだ。
何年か前の若狭ちゃんと糸子お母ちゃん(和久井映見)のようだ(^_^;)。
(ただし正平くんの場合「お姉ちゃんの所に行く」と行き先を告げて家を出ている・・・ってそれは家出というのか!?)
塗箸職人を継ぐよう期待している親の顔を見たら、とても「恐竜の研究家になりたい」とは言い出せなかったのだ。
優しすぎる息子の気持ちを考えなかったことを悔やむ糸子さんだったが、小梅婆ちゃん(江波杏子)は「職人になるにしても
恐竜博士になるにしても、(悩んだほうが)すんなりなれるよりはいい」と語る。
若狭ちゃんもまた、苦しんでいた―自分は家を出て好きな道に進めたが、そのために弟に犠牲を強いてしまった。
かつて正平くんから「博士号をとるために、留学したい」という相談を聞いていた草々兄さんは「やりたいことやってる
お姉ちゃんが、正平は大好きやねんぞ」と、若狭ちゃんを慰めるのであった。
元々、手先の器用な正平くん。小次郎叔父ちゃん(京本政樹)や若狭ちゃんのような不器用な人から見たら羨ましいが・・・
箸工場の秀臣さん(川平慈英)から「塗箸を愛する心」の話を聞いて、ええ加減な気持ちで箸を作るわけにいかないと思ったのだ。
「何でもできるっちゅうのは、案外不自由なこともあるかもしれんのう」小次郎叔父ちゃんは呟く。
小手先のテクニックでキレイな箸を作れても、本物にはなれない・・・というわけだ。偉いねー正平くん。
・今週の主役その弐
はてなの茶碗」のお話には続きがあった。茶金さんが三両で買った「茶の漏れる茶碗」は後に、お公家さんの間で珍品として
もてはやされるようになる
(それだけに、小次郎叔父ちゃんは「どうにかして、正平の作った箸を高値で売りたい」ということが諦めきれない)。
落語再現フィルムでは、蹴鞠で遊ぶお公家さんのもとに茶金さんが現れて一緒に鞠を蹴る場面があったのだが・・・
茶金さんの「中の人」川平さんが本職だっただけに華麗なリフティングを披露!
早送り状態だったので、一見するとわからないのだが・・・ビデオでゆっくり見ると、かなりの技術です。
お公家様も珍品の茶碗より、川平茶金さんの足技に見入ってしまうのでは(笑)。
・人徳でっせ
その「はてなの茶碗」を稽古している、小草若兄さん。四草兄さんに言わせると、噺の中の安茶碗と同じで
「今の小草若兄さんが演じても、一文の値打ちも無い」。草々兄さんあたりが演じれば、金の取れる芸になる・・・と。
はてなの茶碗」にこだわるのは・・・草々兄さんが手を出していないネタだから。他のネタなら、比べられてしまう。
「そんなセコい算段してるから、いつまで経っても『小さい草若』のままなんですよ」と切って捨てた。
果たして、落語会までに完成するのか?
まんじゅうこわい、じゃあるまいし
さて。若狭ちゃんは弟のことを気にしながらも「創作落語作り」と「おかみさん業務」の二足わらじを履いて頑張る。
木曽山くんのために、草々兄さんのお古の着物を仕立て直したり。初高座祝いに若狭塗箸をプレゼントすべく、正典さんに
作ってくれるよう依頼したり・・・と、張り切っている。
そして。今回も「この時」がやってまいりました。そうです。木曽山くんの高座名を考えなければ!
草々の弟子だから「々」の字を入れるのか・・・って、誰の弟子やらわからんようになるぞ(汗)。
が!木曽山くんは今になって「高座に上がるのが怖い」と言い出したのである。一体何があったのか・・・!?
落語研究会出身というのも嘘、持ちネタが十五、六あるというのも嘘」。
しかし。そんな木曽山くんに、若狭ちゃんは自分の初高座の失敗ぶりを話し「失敗したっていい」と励ました。
確かにひどかったからな、彼女の初高座は(汗)。
・どんだけいかほど
後日。正平くんが、自分の作った箸のことを木曽山くんに話した。「小手先の器用さで、どうにか体勢が整ってるだけ」。
そして「お姉ちゃんのためにも、勇気出して高座に上がって欲しい」と激励する。
「正平さんて、僕の一番苦手なタイプや」と木曽山くんは言う。「真っ直ぐな目して、嘘つく甲斐がない」。
実は。初高座に出たくない理由が「怖いから」というのもまた、嘘だったのだ。
「初高座が散髪屋の寄り合いだなんて」不満だというのだ。「せっかくプロとしてデビューするのに、ショボすぎる」。
プロ野球に入団していきなり「優勝決定のかかった試合で先発したい」とほざくようなものである。どんだけ傲慢やねん。
・親父にもぶたれたこと無(略)
が。天知る地知る、人ぞ知る。こういう時は、第三者に聞かれてしまうものです。ちょうど帰って来た草々&若狭夫妻が、
その告白をバッチリ聞いてしまった!
若狭ちゃん、鉄砲勇助の顔にビンタ一発!そして磯村屋さんに謝罪するよう命じた!
「落語するのは僕ですよ」と抵抗する木曽山くんに「落語はひとりでやるもんと違う!みんなに支えられてやるもんや」と
おかみさん若狭が一喝!
「スポットライトを浴びて、舞台の真ん中に居るもんが主役や思ったら、大間違いや!それがわからんのやったら、
落語なんかやめてしまい!」
心の底から出た言葉!よう言うた!身にしみてわかっていることだから、そう言えるのだ。
木曽山くんをしばいたことを後悔し、凹む若狭ちゃん。おかみさんと弟子として、いい関係を築けなくなる・・・と悲しむ。
・それも嘘なんでは
草々兄さんは木曽山くんに「落語は噺家だけでなく、聴いて笑ってくれるお客さんが伝えてくれたものなんや」と諭す。
そして初高座を中止しようとするが・・・やっぱり出たい、と木曽山くん。草々&若狭の噺が心にしみた、というのだ。
また嘘なんと違うか?「嘘やありません!」
一生懸命頭を下げる木曽山くんを見て、若狭ちゃんも草々兄さんも前言を撤回。磯村屋さんに、改めて謝罪する。
「いっぺんでも仰山、落語が聴けたら、それで嬉しいのやさかい」と磯村屋さんは許してくれた。ええ人やー。
・ありがとうマジレッド(違)
正平くんは木曽山くんに「やっぱり、嘘はほどほどにしといた方がええで」と助言。「木曽山くんがホンマの気持ちを
打ち明けたさけ、お姉ちゃんかてホンマの気持ちでぶつかれたんや。そうせんと『ええ関係』は作られん思うで」。
そして「まあ、僕はそれができんかったんやけどな・・・」ぽつりと呟いた。
が、そのとき!福井からお母ちゃんが乱入!正平くんに「パンツの換えを持ってきた」という理由を付け、迎えに来たのだ。
これもまた、若狭ちゃんに「毛糸のパンツを持ってきた」時と同じやな(笑)。
「お父ちゃんと、よう話してみるわ」と正平くん。そのままその場でお母ちゃんに手を引かれ、強制送還と相成りました(笑)。
・嘘を塗り重ねたらアカンぞ
落語会直前。草々師匠から与えられた名は「徒然亭小草々」!見事にそのまんまやー!!
「どっちか言うたら、他に手がなかったいう感じやな」と草原兄さんは指摘。
そして。若狭ちゃんは小草々@木曽山くんに、塗箸を贈った。「人間も塗箸と同じで、塗り重ねた苦労や失敗がいずれ
綺麗な模様になって出てくる」という思いを込めて。
箱を開けてみると・・・お父ちゃんの塗箸じゃなく、正平くんが作った方の塗箸が入っていた!どこで間違えたんだか(^_^;)
けれど。木曽山くんは正平くんの言葉を思い出し「小手先で器用に落語やったらアカン。大勢の人に支えられて、初めて
本物の落語ができるようになる」。自分ひとりで落語やってる、と思ったときにはコレを見て初心に帰れ・・・と解釈した。
今の彼に、一番必要なもの。小次郎叔父ちゃんの目論見は外れたが、この塗箸は「後年に伝わる落語界の財産」を生んだ。
その後も小草々くんは、この箸をお守りのように大切に持ち続けたという・・・。
・すんなりできるよりは
そしていよいよ、落語会の幕が開いた。草々兄さんも天狗座から直行、愛弟子・徒然亭小草々が得意の「鉄砲勇助」を
演じるところを見守る。苦労を重ねた若狭おかみさんにとっても、嬉しさは一入(ひとしお)であった・・・。
次週、トリをつとめる小草若兄さんの身に何かが!?そしてまたしても、五木ひろしさん登場!?